折に触れ父親がいなくて寂しがる私をいつも励まし続けた
「お父さんはあなたの心の中にいつだっているのよ」　
「あなたのことをいつも天国から優しく見守ってくれているのよ」
「だからめそめそしちゃいけないわよ　お父さんが悲しむでしょ」
本当はお母さんが一番寂しかったことを私は幼な心に知っていた

またこんなこともあったよね
私が夜中に熱を出した時に　あなたは私を抱っこして
真冬の寒さの中を開いている病院を探して
何軒も走り回ってくれたこと
そしてあなたは一晩中寝ないで私を看病してくれた
あなたの愛情の深さを強く感じました

あなたの娘はあなたのおかげでこんなに一人前に大きくなりました　
今日私はお嫁に行きます
できることならひと目あなたに私の花嫁姿を見て欲しかった　
あなたがいたから　私は今ここにいられるのです　

私にはもうお父さんお母さんと呼べる人はいなくなってしまったけど　
私はあなたたちの娘で本当によかったと思っています

心の中でずっと思っていても　なかなか言えなかった言葉
今は天国にいるお父さんお母さんへ　

心から「ありがとう･･･　幸せになります」

母が亡くなって遺品の整理をしていた時
偶然引き出しの中から出てきた古いアルバム
その間に挟まっていた色褪せた手紙
それは明らかに母に宛てた父からのラブレター
遠い記憶の中におぼろげに見覚えのある文字　
そこには若かりし頃の父の母への熱い想いが綴られていた
またそれを母が二十年以上もの間　大事にとっておいたという事実
決して目には見えないけれども　強く確かな絆があったことを感じた

父は私がまだ幼い頃に病気で亡くなり　
それから母は女手ひとつで私を育ててくれた
そう言えばいつか話してくれたよね　私が小学生の時
「お母さんは　お父さんがいなくて寂しくないの？」って聞くと
「お母さんはあなたがいるから寂しくなんかないわ」
「あなたがいたからお母さんは今日まで頑張ってこれたのよ」
笑顔であなたはそう答えた

中学生になって思春期を迎え　あなたを困らせたこともあった
いじめに遭った時　あなたは身を挺して私を守ろうとしてくれた
高校生になって初めて彼氏ができた時　まるで自分のことのように喜んでくれた　
お金のことでが気がかりで大学への進学を言い出せなかった時　私の気持ちを察して
「これからの人は大学くらい出ておかないとね」と逆に私を叱咤激励した
そして私を人並みに大学まで行かせてくれた
それは亡き父とあなたの間で交わした約束だった

私が二十歳を迎えた時に　あなたは親としての責任を果たし　すっかり安心したのか
その後めっきり老け込んだ　そしてその頃から体調を崩し始めた
それでもあなたは私に心配させまいと気丈に振舞っていた
でもそれが仇となり　呆気なくそれでいて何かを成し遂げた後の安らかな最期だった
還暦を待たずして旅立ったお母さん　ずっと心の支えだったお母さん
一ヵ月後に迫った私の結婚式に出席したいと懸命に病気と闘った　よく頑張ったね
でも間に合わなかった　神様は意地悪にも母を天に召された

あなたと過ごした大切な日々　私は決して忘れはしない
昔お父さんがそうしたように　
今私からあなたに感謝を込めてラブレターを贈ります